東日本大震災総括(番外編―2)

当町でも在宅酸素療法を行っている患者や人工透析を受けている患者も何人かいたが、彼らは歌津中学校体育館の救護所や仮設診療所では対応できなかった。在宅酸素療法の中でも重症者は即ヘリコプターで病院に移送された。軽症者は血中酸素濃度(SpO2)を測定して安静に過ごしてもらい、翌日以降に救急車で病院に移送してもらった。

 

透析患者については気仙沼市立病院と仙台社会保険病院などが連携して24時間体制で透析を行ったと聞いたが、詳細は不明である。阪神淡路大震災でも阪神間での透析ができなくなり大阪地区に患者を移動して透析を行ったと聞いたことがある。

 

当地区には出産予定日を迎えた妊婦もいたが、被災翌日に避難所に診察に行ったところ破水もなく陣痛も生じていなかったので、とりあえず安心した。ただ陣痛が始まった場合には救急ヘリで気仙沼市立病院に移送するように家族や避難所世話役に説明した。

 

かかる南海トラフの大地震や津波でも酸素や人工呼吸器などを使用している在宅患者の対応が今から望まれる。また透析患者に関しては透析医会等で、どのように患者を診るのかあらかじめ議論が必要だ。津波被害がなくても停電や水道の遮断、あるいは建物や透析機械にダメージが出る可能性がある。また道路が被害を受け自動車が使用できない場合もある。

 

あらゆる最悪の状況を想定して、実際に大地震や津波が発生した時に速やかに行動できるように何回も訓練が必要だ。どのような訓練が必要かは自治体の規模、被災想定地域の広さ、人口により異なる。時には自治体を超えて、あるいは消防署管轄を超えての患者移送なども想定しなければならない。また夏期か冬期かでも避難想定は異なるし、夜間や早朝の場合でも異なる。夜間であれば昼間に比べ被害が拡大することは間違いない。

 

ただ地震・津波対策というのは基本的には各々が避難意識を持ち、つぶさに避難する自己防災であり、山下文雄氏の著作「津波てんでんこ」である。あらかじめ地震が発生したら、どこに逃げるべきか決めておいて、地震がきたら一目散にそこに向かって逃げるしかない。家のこと、家族のこと、いろいろ気になることもあろうが「まず逃げる」それ以外に助かる手はないと思う。仮に難を逃れたなら警報解除まで決して家に戻ってはいけない。